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100の生業を持つ百姓になれ!「日本再興戦略」

バブル崩壊後低成長に悩まされている日本。追い打ちをかけるように高齢化が急速に進み、既存の社会システム維持の為には人口減少の中での経済成長という難易度の高い課題が立ちはだかる。それを実現する為には生産性の向上が必須であり、AI、ロボットをはじめとする技術への期待が高まっている。


しかし、技術の導入だけでこの問題を解決することができるのだろうか。効果最大化の為にも日本のグランドデザインが必要だ。これまでの安易な“欧米方式”の横展では不十分だ。日本の現状に真正面から向き合い、日本の歴史を踏まえた、日本人の価値観に合ったあるべき姿の設定が必要だ。革新的な技術の導入前の今がチャンスなのである。


本書では今世界で最も注目される日本人科学者の落合陽一氏が徹底的な歴史・現状分析で「日本には何が向いているのか」という本質をあぶり出し、高齢化社会・人口減少が進む日本が世界で圧倒的に突き抜けるための処方箋を描いており、これからの日本を考える上で必読である。


日本の戦後からの高度成長期の発展は目を見張るものだった。戦後の混乱の中、アメリカやヨーロッパの社会システムを採用し体裁を整え、モノが不足する中で誰もがより良い生活を求めてがむしゃらに働いた。ゼロからの出発に人口増加の追い風が吹き、経済は成長し、生活は豊かになった。“日本的”とされる終身雇用や年功序列などの強固なシステムの中で、働いた分だけ豊かになったのだ。要はあまり深く考えなくても人口が多いのでそれなりに売れてしまい、失敗を見えづらくしていたのだ。

だが、その後バブルが崩壊。日本は低成長に悩まされてきた。モノ不足→モノ余り、人口増加→減少、経済発展を通じ価値観が変わる中、大量生産大量消費時代に導入した仕組みを盲目的に信じ、これまでもなんとかなっていたので、この先もなんとかなるだろうという根拠のない楽観論でここまできてしまったのだ。日本人はルールを守るのは得意だが、そのルールがなぜ設定されたのか、時代に合ったものなのか、検証し、アップデートするのが苦手である。考えることを放棄したツケが今回ってきているのである。


このような環境の中で落合氏は「①仕事のポートフォリオマネジメント」と「②金融的投資能力」が必要であり、適切な時期での教育に織り込むことを強く推奨している。


①仕事のポートフォリオマネジメント

高度成長期の仕事は重厚長大産業が中心だったが、今はモノとサービスのバリューチェーンで勝負する時代になっており、価値も他業界も巻き込み水平統合で付けていく時代に変わっている。結果、サービス業の比重が高まり、栄枯盛衰が激しくなっている。激動の時代では会社も終身雇用を保証することができなくなる。個人もこれまでのように同じ仕事を同じ会社で続けることはリスクだし、特にホワイトカラーの仕事は代替可能で希少価値がない。そんな中、我々は百姓的な生き方、つまり、百の生業を成すことを目指した方が良いのです。江戸時代の百姓は実際に複数の仕事を掛け持ちしていたのだ。そうすればバリューチェーンで考えられるようになるし、コモディティ化することもない。百の生業の中でもプロフィットセンターとコストセンターを持つことができれば、好きなことも安定的に続けることができる。ただし、何にでもがむしゃらに手を出せば良いという訳ではない。まずは何か1つのことをやりきり、その中でTopになることが必要だ。そうすれば他の業界のTop of Topの目に止まり、初めて横展のチャンスが生まれる。今の時代はTop of Topに”会う“ことへのハードルは下がっている。しかし、会ったり、写真を撮ったりするだけでは何の意味もない。Top of Topとしっかり話ができて、君と仕事がしたい、と思われて初めて横展が可能になるのだ。


②金融的投資能力

Topになる為には時代感覚を掴む能力が必要であり、それは金融的投資能力とすごく似ている。そのため、仕事のポートフォリオマネジメントに加えて、金融的投資能力が求められる。金融的投資能力とは「何に張るべきか」を予測する能力だ。日本人は一般的にこの手の対応が苦手だが、それは縦割りで専門家を育てようという風潮によるところが大きい。そうならない為にも、何でもよいのでTopになり、百姓として横展をすることが重要だ。


これからの時代は上記2つの能力が特に求められるが、教育システムはこれに対応できていない。落合氏はこれらを高校教育に入れ込むべきだと主張している。事実、高校は上級中学校のようになっており、大学受験に備えるだけに成り下がっている。幼稚園、小学校、中学校、高校、大学と人間の成長に合わせた教育をするべきだが、まさに高校はポートフォリオマネジメントと金融的投資能力を教える絶好の機会である。


全体を通じ、落合氏の現状把握能力、歴史を踏まえたあるべき姿の設定力、解決策の提示など大変説得力があり刺激的であった。圧倒的な教養にも驚かされた。自分も自分の好きな分野でTopになれるよう、専門性を深めていき、日本の再興に貢献したい。


日本再興戦略 (NewsPicks Book)

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